小説の神様のこだわりと優しさが息づく住まい。
小説「暗夜行路」の作者として知られ、“小説の神様”と呼ばれた志賀直哉。
彼が約10年間を過ごした邸宅が今も奈良市内に保存されています。
実はこの住まい、志賀自身が設計に携わったことでも知られているのです。和洋、さらには中国風のテイストが加わった、当時としてはかなりモダンな造り。
わざわざ京都から名高い大工さんを呼び寄せて作らせた、こだわりの数寄屋(すきや)造りの書斎には、仕事に関わりのない物を一切置かなかったといわれています。
また、「高畑サロン」と呼ばれるサンルームは、谷崎潤一郎や武者小路実篤らも訪れたというから驚きです。多くの文豪たちが足を運んだこのサロンは、住まいの中で子ども用寝室から最も遠い位置に設けられています。
大人たちが夜を徹して議論を戦わせても、子どもたちはスヤスヤと眠れる。家族一人ひとりの暮らしをきちんと区別しながら、それぞれが楽しく快適な毎日を送れる。そんな自由で明るい雰囲気にあふれた住まいです。
気難しそうなイメージの文学者にも、意外に子煩悩な一面があったのかも知れませんね。
書斎
高畑サロン
写真提供:奈良市観光協会
この「志賀直哉旧居」、現在は奈良文化女子大学のセミナーハウスとして活用されていますが、一般の方も有料で見学することができます。詳細は奈良市観光協会の公式ホームページなどでも紹介されていますので、興味のある方はアクセスしてみてくださいね。