暮らしのデザイン Vol.1 「古い道具と暮らす」

必然性が生んだ北欧家具の魅力

北欧の人は大きいのに、北欧家具のデザインは意外にコンパクト。その理由を店主の服部さんが教えてくれました。
「デンマークでは、国民の80%近くが首都のコペンハーゲンに住んでいて、住環境としては過密気味なんです。だから、地価は東京並みに高く、みんなあまり広い家には住めないので、必然的に家具はコンパクトになるというわけです。でも、それこそがデンマークの家具を扱おうと思った理由である『日本の家に合うサイズ感』です。しかも、デザイン的にも日本の家によく合いますしね。『ヴィンテージ』と言うと高価なイメージがあって、敬遠される方も多いのですが、私たちはできるだけその敷居を下げようと、高価な名のあるデザイナーものにはこだわらず、『おばあちゃんの家にいけば置いてある』ような、北欧でも懐かしく庶民的なものを揃えています。価格的にもお手頃で、サイズ的にもデザイン的にも取り入れやすいとなれば、多くの人に使ってもらえますから。

狭い家で使うための工夫はサイズだけはありません。構造にもおもしろいアイデアがいっぱいあるんです。例えば、テーブルはほとんどエクステンションになっていて、普段は小さく使って、お客様が多い時は大きく使うし、机やドレッサーも開閉になっていて使う時だけ開きます。扉が引き戸や蛇腹の引き込み式になっているのも、狭いが故のアイデア」

引き出すと大きくなるテーブル。
ダイニングテーブルのみならず、コーヒーテーブルも同様のしくみが使われているものもある。

開閉式の机:机部分が開閉する机兼ドレッサー。

鏡を開けると収納スペース。

蛇腹の引き込み扉が印象的な書類用キャビネット。
シャッターのように、蛇腹の扉は引き下げると奥へと引き込まれる。

「また、狭さとは関係ないのですが、北欧ならではのアイテムもおもしろいですよ。北欧は冬が長く厳しいですから、家で過ごす時間が長いんですよ。だから、女性は編み物に時間を費やしていたようで、手芸専用のテーブルがあるんです。他にも、スペース的にも気候的にも庭で植物を楽しむことが難しいですから、家で植物を楽しむための家具調プランターもあるんですよ」

テーブルの天板を上げると手芸道具の収納スペースとなっている。
毛糸を転がしておくカゴがついているものが人気。

部屋のインテリアにぴったりな木のプランター。

「盛りだくさんお話しましたが、(北欧家具を)たくさん揃える必要はありません。お気に入りの椅子が1つあるだけで、その空間がワクワクする場所になると思うんです。そして、それを大切に使う気持ちが暮らし方も変えてくれる・・・。『椅子とわたし』『椅子とテーブル』、『椅子と』の後はお客様それぞれに見つけてくだされば、と思っています」。

■北の椅子と
〒652-0851 神戸市兵庫区材木町1-3
TEL. & FAX. 078-203-4251
http://kitanoisu-to.com/
営業時間:11:00~18:00(カフェL.O.16:00)
休み:水曜・土曜日

おわりに

今回、2つのタイプの古い道具に出会いました。タイプは異なるものの、いずれにしても傷や汚れのある、もしかすると使いにくいかもしれないものをなぜ選ぶのか、少し分かった気がします。それらが私たちに与えてくれるものは、物理的な機能や見た目の美しさだけではなく、それが生まれた国の歴史や作った人たち、使った人たちを思うことで生まれる温かな感情。そしてその想いは、自分の暮らし方や考え方、時には人としてのあり方までをも変えてしまえるほどの力を持っています。
『アンティーク』『ヴィンテージ』が私たちに与えてくれるものは、『暮らしの栄養』、『心の栄養』みたいなものではないでしょうか。

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