暮らしのデザイン Vol.1 「古い道具と暮らす」

素材や技術に敬意を払ったモノ選び

『アンティーク』という物語の入り口に立つにはまず、どんな些細なことでもいいので一つ、『アンティーク』に関する知識を持ってみるのはどうでしょう? 例えば、希少な素材を1つ見分けられるようになるとか、一人の有名なデザイナーの名前と作品の特徴を覚えるなとか。それらを探して歩くだけでも楽しいかもしれません。

「素材で言うと例えば、現代ではワシントン条約で輸出入が制限されている3大銘木の一つ『マホガニー』。今は制限が厳しいため材料としてはほとんど出回りませんから、アンティーク家具としてしか出会えないものです。少し黒っぽい色をしていて、柔らかいのでキレイな彫刻を施せるのが特徴です。同じく3大銘木の『ローズウッド』や『ウォールナット』は、その木目の美しさや面白さに注目してみると違いに気付くようになります」

彫刻が美しいマホガニーのキャビネット。

引き出しの裏:当時の作品には見えない引き出しの底にまでしっかりとした厚みのマホガニーが使われている。価値の高さ、修復の丁寧さがうかがえる

ローズウッドは日本名を紫檀と言い木目の美しさが特徴。

ウォールナットは個性的な木目が特徴。薄くスライスし、表面に貼り合わされることもあった。

「また、ガラスではヴァセリンガラスはとても稀少です。ウランを混ぜた吹きガラスで、紫外線が当たると蛍光発色するので、ランプシェードなどによく使われていました。現在は、ウランが手に入らない上、作り手の人体への影響を考えほとんど製造されていません。もちろん照明器具として使用する上でウランが揮発するようなことはないので安心してください」

ヴァセリンガラス:ウランを混ぜて吹いたヴァセリンガラスは製造中止の稀少なガラス。ブラックライトをあてると蛍光に光る。

「あと、デザインでは1700年代に隆盛を極めた当時を代表する家具デザイナー、トーマス・チッペンデールを知るだけで英国家具を見るのがとても楽しくなるはずです。なぜなら、彼の流れをくんだ作品がたくさんありますから。猛禽類が玉をつかむ様子を模したデザインは彼以降、ヴィクトリア時代(1900年代初頭)まで流行り続けました」

家具の脚に、猛禽類が玉を握っている様子をあしらったトーマス・チッペンデールの代表的なデザイン。

「アンティークをインテリアに取り入れるのに、部屋全体をアンティークで揃えなければならないということはありません。照明1つ、椅子1脚からでも充分華やかになるし、空気感も変わります。英国家具は木の素材を生かした落ち着いたものが多いので、現代のインテリアや和室などにも合やすいんですよ。
最初はどなたでも、まず『すごいなぁ』『高いなぁ』と感じるものだと思います。しかし、見続けることでその『すごさと価格の根拠』、そして『自分の好み』が分かってくるものです。まずはじっくり見て歩いて、時間をかけながら本当に気に入った運命の一品を探し当ててください。どんなに高価なものでも価値を感じない方にとってはゴミも同然。価値を感じて手元に置いてくださるからこそ、愛情を持ち、大切にでき、そしてその家具も輝くことができるんです」。
中には1年間、悩み続けてから購入した人もいるそうです。

クレアアンティークスは購入時に限らず、購入後も職人ならではの相談やアフターケアを受けてくれるので、取り扱いに不慣れな初心者にはぴったりなお店です。また、個性的で気さくなお二人の職人さんのお話を聞くだけでも新しい発見がいっぱい。そこから自分の興味の湧く方へ広げていくのもいいかもしれません。

■取材協力:クレアアンティークス
〒612-8038 京都市伏見区鍋島町26番地
TEL. & FAX. 075-611-2007
http://www.crair-antiques.com/
営業時間:10:00~18:00
営業日:金・土・日のみ営業

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