暮らしのデザイン Vol.1 「古い道具と暮らす」

古いものに学び、想像の旅がはじまる
~京都 「クレアアンティークス」を訪ねて~

酒蔵と稲荷大社で有名な京都市・伏見区。近鉄「桃山御陵前駅」、JR「桃山駅」、京阪「伏見桃山駅」いずれの駅からも徒歩7~8分のところにあるのが『クレアアンティークス』です。

ヴィクトリア時代の英国家具を中心に販売していて、その特徴は何と言っても修理・修復を手掛ける職人の店であること。特殊な技法や材料を必要とするアンティークの修復は専門の職人が少ないため、通常のショップでは外注することが多い中、この店はガラス職人の新谷さんと木工職人の白井さん、2人で営業している100%職人の店。2人でイギリスに買い付けに行き、自信を持って勧められる本物だけを持ち帰り、お客様の望みに耳を傾けながら、自分たちの手で丁寧に修理・修復し販売しているのだそうです。

「ガラスは学生時代に日本とアメリカで学んだのですが、その後英国アンティークに出会い魅了されイギリスを訪れました。現地へ行くと職人さん達に『本物に触れろ=アンティークに触れろ』と言われました。職人は自分の大切な技術をそう簡単には教えてくれません。知りたければ、本物をよく観察して想像し、自分のものにしろということなんです。そして、見ているうちに気付くんです。現代では再現不可能なモノやコトがたくさん詰まっているということに。ガラスにしても木工にしても、昔は分業で、多くの職人の手作業によって膨大な時間をかけて作っていました。とくにヴィクトリア時代(1831年~1901年代)はヴィクトリア女王が治世したイギリスが最も裕福で輝いた時代でした。だから、色々な植民地から良い材料が入り、お金を掛けた贅沢なモノづくりができたんです。そこで、優れたデザインや素晴らしい技術が育った。それを僕たちは学びたくて『アンティーク』の側から離れられなくなったんです」。

ステンドガラスも手掛けるガラス職人の新谷さん

彫刻の修復も手掛ける木工職人の白井さん

『アンティーク』を知ろうとする時、それが生まれた国と歴史が必ずついてきます。そしてそれは『アンティーク』の楽しみ方の一つではないでしょうか。「それが生まれた国と歴史に思いを馳せる」「それを作った数多くの職人やデザイナーに敬意を持つ」「それを使っていた人の生活や思いを想像する」。すると、小さな傷や汚れ、修復の跡が物語の入り口となって空想の旅が始まります。今までなら不快に感じたかもしれない傷や汚れ、修理の跡などが愛さずにはいられないポイントになるのかもしれません。

ステンドグラスは文字が読める人が少なかった時代、キリスト教の聖書を絵にして伝えるために使われ、布教とともに広がりましたが、時代とともにお金持ちのステイタスを表す装飾品として扱われるようになりました。

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