もともと開き直りで生きてる方なんですけど(笑)。60まで生きるとは思ってませんでしたからね、1,800gで生まれた子は。それが手術は63歳のときなんですが、あのことで、ほんとに怖いものがなくなりましたね。60歳を過ぎてもまだ仕事ができてるっていうのは、それは自分でもちょっと驚きでね。
あの時はリスナーの方から2,000通を越えるハガキや手紙やファックスやメールや、それから千羽鶴を7千羽か8千羽か送っていただいたんです。それでその千羽鶴を病院のベッドに全部ぶら下げて手術終わるまでそうしてたら、看護士さんの中には番組を聞いてはる人もいれば、聞いてない方もいて、「これ何なんですか?」って聞かれるわけですよ。で僕が「これ、千羽鶴」って答えると、「どうしたんです?」って聞くから「リスナーの人が作ってくれはってん」て。そうしたら「リスナーってどんな人なんです?」って言うから、「こんな人やねん!」って。「へぇー」ってびっくりしてました。
自分の家族が入院したからって千羽鶴を折る人はいないと思うけど、他人のために千羽鶴折ってくれる人がいる。そういうおつき合いは30年させていただいてるからそうなのか。とにかくラジオを聞いてくださってる方とまったく聞いてない人との温度差がものすごく違いすぎるので、なかなか説明するのが難しいんですね。
テレビで視聴率の2、30%ある番組を観てないっていうと「えー、あんた観てないの?」って観てない方がバカにされたりするんですけど、AMラジオを聞いてるって言うと「えー、ラジオなんか聞いてるの?」っていう反応じゃないですか。特に若い人は。なのでリスナーと喋り手がどれぐらい濃いつながりでコミュニケーションをはかってるかっていうのはなかなかわかっていただけないんです。
公開放送なんかをやったりすると、僕が酒が飲めなくて甘いものが好きやって知ってはるので、みなさんおはぎとかあべかわとか持って来てくれはって、お菓子とかケーキとかがステージいっぱいに並ぶんです。農家の方はタマネギとか白菜とか大根とか。海の近くへ行くと今度はハマチや鯛やと。
僕はその場で実際に会うのは初めてだけど、聞いてくださってる方には5年なり10年なりのつきあいになると。他人じゃないっていう感覚なんでしょうね。で、知ってる人に会いに行くのに手ぶらでは行かれへんやろという、昔ながらの日本人のつき合いの形というか。田舎もんのそういう匂いが僕にはあるんでしょうね、やっぱり(笑)。