伝統のこころとわざを再発見 第14回 静岡の指物家具メーカーを訪ねて No.2

前回はいろいろな種類の材を用いた指物家具をご紹介しましたが、今回はより一層指物の技術が活かされた「祈りの家具」を見せていただきましょう。

最初のヒントは李朝家具の全集の中に見つけました

李朝家具に興味を持ち韓国を訪れ、購入した李朝家具の全集の中に龕室(がんしつ)という仏壇と同じような使い方をする小型の家具を見つけて閃きました。
シオジ材で作った吉蔵龕室。
よりシンプルで小型のケヤキの小厨子。現代の住まいに合った仏壇を作りたいと思いました。

よりモダンなデザインに挑戦

2007年県の支援事業でメゾン・エ・オブジェに出展した時の吉蔵出品作品「厨子カシコ」マホガニー材。
建築家とのコラボで作ったカテドラルを思わせるようなデザイン。その小型版「掌(たなごころ)カシコ」。
扉の形も設置角度も垂直でなく、開けると上に向かって広がる「カマエ」。
角度の付いた細工は難しく、指物ならではの美しい仕上がりです。

デパート家具売り場の一角に祈りの家具コーナーができました

以前からルートのあったデパート家具売り場に置いてもらうと1台また1台と売れていき、いつのまにか専用のコーナーができ、今では仏壇店からも頼まれるようになりました。

扉も背板もなく逆光の位置に置くと美しい「ポデューム」。
内部に大事なものが存在するイメージの「ポルタ」。
キャビネットの上に展示台を設置した祈りの家具「ムゼウム」。大切なコレクションの展示台にもなりそうですね。
より一層小型化し、扉も省略して価格を抑えた親しみやすい「掌(たなごころ)ありか」。

取材を受けていただいた社長の杉山さんご本人は製作に携わらず、商品の企画や開発と販路の開拓を担当するいわばプロデューサーの役割で、次々と新しいイメージを商品化してきました。
その秘訣はと問うと好奇心とのこと。関心を持った対象をとことん知る過程でさまざまな人やアイデアに出会うとのこと。英文ホームページがきっかけで始まったイギリスの家具研究者との交流は今も続いているそうです。

取材協力
(C) ABC HOUSING

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