ABCハウジング このまちのストーリー

千里ニュータウン(大阪府 吹田市・豊中市)

第4章
ニュータウンだけどふるさと

次にお話を伺ったのは、千里ニュータウンに生まれ、住み替えながら千里ニュータウン内で暮らし続けている岡本昭子さん。デザイン的にも風土としても千里ニュータウンが大好きだという岡本さんは50周年のイベントにボランティアとして参加するなど、まちを盛り上げる活動にも積極的に参加されています。大阪府がさまざまな研究を重ね意図的につくった実験都市・千里ニュータウンに対して、そこで育った子どもたちは当時、どう感じていたのでしょうか。

「生まれた時からここに暮らしているわけですから、ニュータウン(新しいまち)だけど、私にとってはふるさとなんです。だから逆に、神社があったり伝統的なお祭りがあったりする一般的な町に対してはエキゾチックでおもしろいなぁという印象を受けます。私たちにあったのは、自治会が学校の校庭や近隣センターなどで実施する盆踊りくらいですから。もちろん独自の踊りもないです。色んな地方から色んな人が集まって来ていますから、炭坑節から河内音頭まで何でもありですよ」。

千里ニュータウンでは『ソーシャルミックス』という考え方が導入されました。新たにまちをつくるのだから、職業も出身も経歴や所得も異なるさまざまな人たちに住んでもらう。なぜならば、それが社会だから…というスタイルです。そのことについて、子どもだった岡本さんの目にはどう映っていたのでしょうか。「子どもとしては何も感じませんでした。あえて言うなら、いろんな友達の家に行くんですが、どこも同じ間取りだったりするんです。団地ですから。なのに、同じ間取りのはずなのに、それぞれに使い方や設え方に個性があることにとても興味をそそられました。社会に出て他のまちを知って思うのは、千里ニュータウンの人たちは何でも受け入れてきたような気がします。みんな新参者で入って来ていますからね、古い因習などもありません。去年入った人も、50年住み続けている人もみんな同じように意見が言い合える環境であることが、このまちの魅力だと思います」。

確かに、今回の取材を通して感じたことは、千里ニュータウンに暮らす人々の中にある「自分たちでまちをつくる(つくってきた)」ということへの意識の高さでした。それと、千里ニュータウンのどの地を訪れても、少し年配の人に声を掛けると「まちびらきの年に入ってきたんですけどね…」という言葉。千里ニュータウンの多くは賃貸住宅なので、引っ越そうと思えば簡単に移れるのに住み続けている人が多いのは、おそらく、住みやすく、住み心地の良いまちだからでしょう。

岡本昭子さん

千里ニュータウンで生まれ育った岡本さん。今も、ご主人と息子さんと一緒に千里ニュータウンに住み続けています。

盆踊りに参加する子どもたち

まちびらき当時の藤白台小学校の様子。水はけが悪く、初めての梅雨で校庭が冠水しました。
写真協力:永井俊雄氏

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