今回からの2回のコラムは「地球が求める住宅」というテーマでお話します。前回までのコラムでは「地域が求める住宅」という比較的大きなテーマで考えてきました。そして今回は「地球」というさらに大きなテーマでありますが、ここでいう地球というのは普段皆さんが生活している基盤であり、生活環境そのものとします。そんな身近な生活環境から住まいづくりを考えるとどのようなプランになるのか、今回は生活環境のなかの熱環境に焦点を当ててお話していきたいと思います。

今年は記録的な猛暑日が続き、地球温暖化をますます肌で感じるようになってきました。地球の温暖化によって気温が上昇し、さらに湿度や風通しの悪さが合わさり、体感温度はそうとうあがっているように感じます。建物内でも熱中症になることが問題にもなっています。

「垂水の家」
南北に抜ける風を
感じるLDK。
写真:坂下智広
「垂水の家」
日差しを調整する
庇のあるテラス。
写真:坂下智広

いままでの設計の考え方でいきますと、体感温度を下げるのに空調設備で解決することが多かったのですが、これだけ暑さが増してくると設備機器の力だけに頼るのにも限界が出てきます。例えば私の事務所はビルの最上階にあるのですが、屋上のコンクリートが熱を持って、一度暖まってしまうと空調だけの力ではなかなか冷えません。ですので、屋上に水を撒くなどかなり原始的なことをしています。しかし、この原始的な方法が実はこれからの暮らしでは重要になるのではないかと思っています。例えば、庇で日射を遮るとか、打ち水で風を起こすなど、昔ながらの環境対策は忘れられている部分もありますが、今は学ぶところも多いと思います。また、屋上緑化も都心では有効な方法だと思います。

熱環境の観点から言えば、断熱材やサッシの性能をあげるだけでなく、さらに、サッシの庇を長く延ばして夏の太陽光線を遮るなどの工夫をすれば、効果も倍増します。そういった設計のひと手間が心地よい住まいづくりのポイントなのではないでしょうか?

先程、私の事務所を例にあげましたが、都心では周りに建物が建て込んでいるので、建築物の設計において太陽の位置や、風の向きを考慮する傾向が少ないように感じます。しかし、風が起こす空気の流れなどは住環境に大きく影響を与えるので、とても重要だと私は考えています。他には開口部を開ける方向(左右の開き方など)や開口部の設置高さをデザインすることで、風の流れの向きを意図的に設計し、室内の空気の流れを作り出すことができます。風が通れば住居内の熱が循環されて、体感温度が低くなります。

設備機器で生活環境を快適にしようと思うと空間にだけ意識が向きがちですが、日光や風といった自然環境にも目を向け、積極的にプランニングに取り入れることが、本当に快適な住まいづくりへの第一歩なのではないでしょうか。


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