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前回まではクイズも交えて楽しく進めてきましたが、今回は少し趣向を変えて、
インテリアスタイルに影響を及ぼす流行=「トレンド」について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。


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住まいのインテリアにトレンド現象がおき始めたのは、
バブル(1980年代半ばから90年代初め)の頃からでしょうか。

それまではと言えば、店舗などの商業空間はデザインの幅も広く、その時代のトレンドがいろいろ展開されていましたが、
住宅では住宅向きの落ち着いたデザインを、いくつかのパターンに分けてお客様の好みに対応していました。
 
その頃は「テイスト」や「スタイル」といった言い方ではなく、
「インテリアイメージ」と呼ばれていました。「ゴージャス」や「ダンディ」というような名称や、
漢字一文字(「楽」とか「隠」など)を当てたりして、
デザイン的な特徴よりは、暮らし方イメージで区別することもあったようです。

そして時はバブル、建築や店舗デザインは「ポストモダン」の大波に呑み込まれました。
合理性や機能性を重視した「モダンデザイン」がちょっと窮屈に感じられ、
より人間的な楽しさや個性を率直に表現したい、という気分が人々の間に勢いよく広がって行きました。
たとえば大手ビール会社の本社ビル、特徴のあるデザインはその時代の気分をよくあらわしています。

ポストモダンのデザインはあまり住宅向きではなかったので、
直接取り入れられることは少なかったものの、展示場でも色使いが積極的になったり、
やや派手目のコーディネートが見られました。

アサヒビール株式会社 吾妻橋本部ビル
スーパードライホール屋上
「炎のオブジェ」
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バブルがはじけた後、過剰デザインに疲れ、はしゃぎすぎを反省し、
資源を浪費しない環境にやさしいエコロジーの考え方とともに、「ナチュラル」路線が静かに広がっていきました。
これは住宅にはぴったりだったため、すんなりと、そしてたっぷりと浸透しました。
モダンやクラシックにも、穏やかな色使いや質感・素材感を重視するなど、ナチュラル傾向が反映されました。

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90年代後半、ナチュラルにも少し物足りなさを感じ始めた頃、
若者の間でミッドセンチュリー(1950~60年代)のアメリカの家具がレトロな感覚として人気を呼び、
それをきっかけとして、モダニズムリバイバルが予想を超える勢いと大きさで広がっていきました。
21世紀に入り、建築も店舗も住宅も「モダン」の同じ流れを共有しています。
それぞれの分野での一時的な流行はこれまでも見受けられましたが、
一つのデザイン傾向がこんなに広範囲にひろがるのは珍しい現象じゃないかと思っています。
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